淡水のオレンジ色の夕日
ホームを降りると、改札のところには、なぜだかまだクリスマスの大きな飾りが置いてあった。
もう1月11日である。
台湾の人はおおらかで、時期外れのものがあってもみんな気にしないらしい。
そして改札を出ると、目の前でブラスバンドの一行が演奏をしていた。
この辺にもたくさんの人がいたので、まるでお祭りみたいな騒ぎだった。
私たちはそのまま川の方へ向かった。
ここからずっとさらに河口に向かって、川沿いに賑やかな通りが続いているのだ。
さすがに台湾人にとっても人気スポットなだけあり、カップルや家族連れ、犬連れなどとてもたくさんの人が楽しそうに歩いていた。
ここからは左手の対岸に沈んでいく夕日を見ながら、この賑やかな通りを川に沿って歩いた。
みんな楽しそうで幸せそうで、歩いているだけで楽しくなる。
息子も楽しそうに走ったりしながら進んでいく。
ただ、ふざけながら歩いて沢山の人通りの中で危なく、しかも迷子になったら大変なので、途中から抱っこして歩いた。
夕日はどんどん沈んでいった。
沈むときというのは、驚くほど太陽の動きが早く感じられる。
というか、こういうときくらいしか、太陽の動きなんて感じられないのかもしれない。
最初は黄色に輝くまぶしい太陽だったが、沈むにつれてオレンジ色になっていった。
そして次第にまぶしさも取れ、そのうち形まではっきり見えるようになってきた。
最後は、対岸に見える小さな建物群の中に沈んでいった。
オレンジ色にやわらかく輝く、丸く大きな太陽。
感動するほどきれいな太陽だった。
こんなにじっくりと沈みゆく太陽を最後まで見たのは、もしかしたらギリシャの時以来だろうか。
淡水に来て本当に良かったと思った。
太陽が沈む最後のときは、立ち止まって夕日を眺めた。
多くの人が川岸のヘリに座り込んで夕日を眺めていた。
そんな中私たちの目の前にも、川に足をたらして座って夕日を眺めている中年のご夫婦がいた。
太陽の美しさに満足し、ふと足元のその夫婦を見たら、なんと夫婦が連れていたチワワが、あろうことかご主人様である旦那さんの背中におしっこをひっかけているところであった。
旦那さんはまったく気づいていない。
言葉も通じないことだし、知らないほうが幸せかと思い、そのまま教えずにそこを立ち去った。
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